当日版権ガレキの転売は違法か?


答え・「マナー違反だが違法ではない」
答え・「転売禁止特約が成立していれば違法であり、民事の債務不履行責任が生ずる」
(2011/12/15訂正)


「当日版権」の検索でいらした方は、当日版権問題の補足を御覧下さい。
「同人誌 ワンフェス」でいらした方は、ページの下の方の「珍論」をどうぞ。
「ガレキ 転売」でいらした方は、そのままお読みください。


2014/4/26

○「宿題や〜」の箇所の文字の拡大度を、二倍から更に大きくしました。


2011/12/15
■厳密にはグレーゾーン

 タイトルの下の「答え」を変更しました。
 以下は普通に「転売するな」問題を扱い、当日版権制度自体とは無関係です(あくまでもディーラー側と版元との契約にすぎず、買い手側には一切影響を及ぼさないため)。

 この問題のポイントは「転売禁止特約が有効か否か?」にあります。実際に成立するかしないかは、裁判長ならぬ私の知るところではありませんが、テンバイヤーの安眠を妨げる要素である事は間違いありません。

 「転売するな」の注意書き、すなわち「転売禁止特約」は、箱に小さく書いてあるレベルでも成立したとみなされるのか否かは、実際良くわかりません(判例は無い模様)。これが成立している場合、無視すると「債務不履行」により、損害を請求する権利が発生します。テンバイヤーのピンチです。

転売禁止特約&違反時の個人情報公開特約付きグッズ販売−(バーチャルネット法律娘 真紀奈17歳)
 実際、これを行っているディーラーはごく一部ですが存在します(海賊版コピーに困っている様子でした)。この記事は2004年の時点で知っていましたが、うっかりと若気の至りで「契約とは書面できっちりと交わされる物だ」とばかり思い込んでいたので、この特約自体を例外的な物として考えから外していました。しかしこれは大きな誤りで、口頭でも契約は成立します。よってすなわち、
宿題やおてつだいを忘れた子供も、息子を遊園地に連れて行けなかった父親も、彼女との食事をすっぽかした男も「違法」(債務不履行)


という事になります。知らなかった・・・(まあ実際に問題になるのは「婚約破棄」くらいの様ですけど)。

転売禁止特約付き売買契約の転売禁止は有効でしょうか? 以前、店頭から購入した... - Yahoo!知恵袋
 「消費者契約法10条」でどこまで跳ね返せるというのか・・・教えて裁判長!

転売を禁止する法律 - Yahoo!知恵袋
 法律上の力は無し。

「転売禁止」と出品者が記載している商品をオークションで転売することに肯定的な... - Yahoo!知恵袋

>商法では、売り主から買い主に所有権を移転する場合は、なんら債務等がない完全な所有権を引き渡さなければならない・・・とあります。

 ・・・というのが引っかかるのですが、どうなんだろ?

不法行為 と 違法行為 の違い:ディファレンス
 参考知識。世間的には 「違法行為=犯罪」と受け取る人は結構多いと思います。



2004/9/7〜2006/4/18
『テンバインとぶ』

 (オーター)
 即売会が ひらかれた 
 きらめく大手 客を引く
 購買予算 たくわえて
 ひらいた財布 札が飛ぶ
 遅れるな 開会時間
 悲しむな 売り切れても
 のびる行列が 早く売れよと
 シャッターあいて 買い手がはしる オオオ
 儲ける意思を つらぬいた時
 オータバイヤー テンバイン
 オータキット テンバイン
 カッタ ウッタ ヤッタ
 俺は商人

 ええとまあ、「転売」というと何だかやましいイメージが漂いますが、法律的には別にそんな事はありません(アコギな転売業者を規制する法律はあるのですが、ヤフオクの様な個人に適用される物ではないそうです)。なお、ディーラーが売れ残ったガレキを自分で流すのは違反行為ではありますが、少なくとも「自分で買ってから売る」事くらいはしているでしょう(まあこれも契約で禁止されている可能性は高いのですが、契約違反は所詮は「民事」)。また、そもそも契約してなければ例えサークルの仲間だろうが第三者ですから、後はムニャムニャ・・・
 ・・・とかうっかり言うと「転売行為は微妙な均衡の上に成り立つ当日版権システムを云々」と必ず突っ込まれるのがお約束。まあ、この辺は私のリンク自由主義のスタンスと同じで、「例え法律で問題なくてもモラル的に悪い事(訳/オタクのローカルルール違反イクナイ!)」な訳ですから、理解してもらえない人が大半である事は充分承知の上です、ハイ・・・。
 なお、転売その他の状況に関しては、別に誰かが間違っているせいだ(頭の固い版元とか、当日版権制度とか、主催者企業とか)という訳でも無論なく、単に「買うヤシがいるから売るヤシがいる」というだけの事で、つまり世の中はなる様になっており、なる様にしかならないケセラセラ、という所かと・・・。 

2004/9/7 (2006/3/22 雑記より移動)


「ワンフェスの掟は法律よりも重い?」

 まんだらけが「当日版権ガレキ買取り強化」だそうで・・・。
http://blog.livedoor.jp/geek/archives/6444370.html
http://www.e-flick.net/dia.html

 上のサイトで全文が引用されている、ワンフェスパンフレットにおいての「転売は売った方も買った方も違法」という発言には法的根拠がありません。著作権許諾を受けた正規の物である限り、消尽理論(ファースト・セール・ドクトリン)が適用され法的には差が無いというのが、一般世界に住む商人にとっての常識的な考えであるはずです。しかしまあ、ここの様な個人運営のウェブの怪しげな情報ならいざ知らず、ワンフェスのパンフレットに大きくはっきりと書いてある以上は「教科書が間違ってるのも同じ」ですから、上のサイトでの反応は至極当然の物であるとは言えます。ですが、やはり法律という物を扱う以上は、モラルやマナーといった物は隅に置いて、シロはシロ、クロはクロとまずはっきりさせる必要があると思います。(※1)

 しかし、転売が法律上は「是」であっても、ワンフェス参加者のマナー、つまりガレキ模型界の村の掟においては無論「悪」だと言えますが、まんだらけは当然ながら模型村の住人ではありません。まあ元々、当日版権ガレキが中古品として扱われる事は以前からあったものの規模的には目立たず、それに対してどうこう言われていた記憶も無いですし、パンフレットを見る限りではワンフェス側が直接問題視しているのはヤフオクだと言えると思います。そしてヤフオクには、版元が恐怖する海賊版ガレキ、いわゆる香港コピー品が横行(※2)している以上、おそらくヤフオク自体への出品も同時に敵視されていると考えられます(※3)。よって確実に「当日版権(※4)は微妙な脆いバランスの上に云々〜」とは言える訳で、都会の商人に対して「転売が版元を刺激する事で、商品自体の供給が断たれてしまう危険性」を強く訴える事はやぶさかではありませんが、それはあくまでも法律とは別問題として扱うべきだと思います。

 この問題がややこしいのは、ひとえに「版元の意思」の存在だと思います。版元による「儲けてもらっては困る」という声が(非公式発言ながら)存在しており、公式には聞かないものの「転売は困る」という声も間違いなくあると考えられます。当日版権制度にとっての壁が「申請数が少なすぎるためビジネスとしてお話にならない」という理由だけしかないのであれば、ディーラーがより数を売るために転売行為は貢献するとは言えるでしょう(ビバ、資本主義)。しかし版元の意思による「個数制限の締め付け」が実際にある以上、需要と供給の差が常にアンバランスとなるため、従ってテンバイヤーの存在は必然的で避けられない物だと考えます(※5)

 ではここで、「法の隙間を潜るテンバイヤーが(一般社会的には)悪と呼べないのなら、ならば悪者はどいつなんだ?」という疑問に対しては、物の作り手より中間業者(商人)が儲かるという「社会の仕組み」その物だと考えます。まあ「資本主義は悪だ!」などとここで電波っぽく叫ぶつもりはありませんが、おなじみの「(C)創通エージェンシー・サンライズ」という著作権表示の順番が、未来に明るい希望を持つ少年少女達に対して、現実を何よりも雄弁に語ってくれていると思います。

(※1) ただし、厳密にはヤフオク転売がシロであるとも言えません。オークションにおける画像掲載その物がグレーゾーンと言えなくもないためで(まあ10%以下という所でしょうか)、現時点では判例が無いため何とも言えませんが、もし大企業が一般人相手に訴訟を起こせば、裁判とは資金力が全てですから(ン?)違法とする判決が下るという可能性は否定できません。つまりワンフェス側の主張は厳密に誤りではありませんので、よい子のテンバイヤーのみなさんはヤフオクには箱と内容物の写真のみを載せて転売するか、まんだらけに持ち込みませう。

(※2) 現時点では買い手側がコピー品を区別する事は充分に可能な様なので、買い手がいるからこそ売り手も存在できる訳で、「海賊版の購入は違法行為であり、すなわち犯罪に加担しているに等しい」とはっきりと言う事ができます(ただ、ただ買っただけでそれを売ろうとしない限りは罰則規定はなし)。そもそも、海賊行為で数千万も儲けるなんて全くうらやま・・・じゃない、怒り心頭ぷんすかぷんです。
↓(ガンダムDVD海賊版を売った香港人、お縄)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0407/08/news036.html

(※3) 全ての版元が転売を嫌うのかどうかは知りませんが、少なくとも猛烈に嫌う所は存在する様です。
http://homepage3.nifty.com/machina/c/c0005.html
http://www10.ocn.ne.jp/~kuni/note/machina.html
http://xgamestation.cside.com/zaregoto/200211.htm

(※4) 当日版権制度に問題があるとすれば、ビジネスとして成立する(版元が恐れる)数を掃ける大手と弱小の差や、各版元の考え方が一様ではない事(ガイナックスの様にガレキを理解しまくっているメーカーと理解に乏しいメーカーの落差が大きいため、よって原えりすん氏が提唱される版元ランク分けには賛同)といった部分のシステムの改良の余地があるとは思います。ですがまあ、その程度の事は向こうも当然考慮済みで「なる様になっており、またなる様にしかならない」と思います。

(※5) ディーラーが転売を防止したいならば、「壁際に配置してもらい、閉会時間に売る」等で、買い手を長時間並ばせて貴重な時間を奪う(よって転売ヤーは商売にならない)といった対応策を個々に取れば良いかと。ただ、住所氏名を記入させて契約で縛る方法だけは個人的に反対です。
 なお、転売の法的是非やテンバイヤーが許されるべきかに関しては、同人誌の転売問題について扱った同人誌が参考になりました(転売上等との衝撃の結論)。

 2004/9/11(2006/3/22題名追加) 


『暴言・転売擁護論』

(〜電波度120%増強でゆんゆんお送りします〜)


 同人誌の転売問題を、経済論側面から考えた同人誌があります。興味がおありの方は「転売屋解体新書〜アナタの血何色?」、「続・転売屋解体新書〜転売 屋の血は青かった〜」(Vitrual LaBoratory発行)をコミケで・・・と言いたい所ですがもう入手は困難かも。また、同人誌の転売にしか触れられていませんので「誰かガレキ転売も斬ってホスイ・・・」とは思うもののいつも他人任せも何ですので、面倒ですがたまには自分でやる事にします。

 しかし、突っ込んでいるのが「ここと2ちゃんだけ」という事は、、この件が「種ガンメカデ問題」の様にタブーでアンタッチャブルなのか、それとも単にヒマ人しか突っ込む必要なしなのか・・・どなたか教えてプリーズ。
 ええと、模型界に詳しくない方が御覧になられているかもしれませんので念を押します。転売問題はイベントの死活を左右する重要な問題とされています。だからこそページを作ったのであり、そうでなければ日記で「パンフレットの発言に間違いがあった」と一言ですませるだけです(間違いは人間誰でもしますから、小さな事にいちいち突っ込んでいたらキリがありません)。ただし、「転売擁護だ!」と受け取られる立場にある以上、「単に間違いであるとの指摘であり、それ以上でもそれ以下でもない」と責任逃れをする余地を残しました。
 結局の所「レットイットビー・・・」と放り投げるしか自分にはできませんが、「資本主義制度の歪みが表出した結果、汗水流して働くよりも株で云々」と諦めた思考停止も何ですし、説明が不足による誤解が生じている可能性もありそうですので、以下に長々と述べる事とします。

 ガレキの転売を生む要因の一つに、「当日版権制度」があります。そして版元が提示する生産個数に大抵上限があるため、すなわち「需要が供給を上回る→レアになり転売発生」というおなじみの構造が生まれます。しかし転売ヤーは叩かれますが、こちらはせいぜい匿名板で文句を聞く程度・・・。とはいえ、制度自体に文句はさほどありません。数を制限された大手にバイアスがかかるという事はすなわち、負け組の弱小ディーラーにとって間接的に(オタクの懐が減らないため)有利であると言えます。結局自分が「勝ち組の敵、負け組の味方」というだけの理由ではありますが、そういう訳で制度云々に関しては横に置きます。

 ガレキという要素を抜きにして言うなら、「転売は必要悪」だと思います。まあ「その必要が無い」にこした事はありませんが、純水は体に悪く、澄んだ川にはドジョウは住めません。ソープ等の風俗が禁止されている清い社会は人間が住みやすい所ではない様に、転売の禁止された世界も住みやすい所だとは思えません(どのみち目に見える歪みをツブしたところで、根っこが同じ以上はどこかで別の歪みがおきるだけです)。

 そもそも転売がイカンというのは、当事者を除けば「絶対強者」か、もしくは「被害者だと思い込んでいるが実は無関係な者」の理屈です。例えば、モテるイケメンが「ソープなんてこの社会から無くせばいい」と吐いている様な物で、それは確かに清く正しい上に女性は喜ぶでしょうが、そうなると困る人も大勢います。また、オバサン議員は「児ポ禁止法の二次元適用」をしきりに叫びますが、実行されたら最後「萌え文化」は即壊滅しオタクは絶望の淵に沈むしかありません・・・。
 オタクにおける絶対強者とは、「東京周辺に居住しているか、地方在住でも即売会参りできる財力を持つ者(かつ当日に確実に休暇を取れる者)」を指します。つまり私の耳には、転売批判の声は「オレはちゃんと買えるけど即売会に来れない貧乏人の田舎者は欲しくても諦めるんだな、正義は守ろうぜベイベェ」とか、「オレが諦めてるんだからみんなも正義のために我慢しろ、ヤミ米を食べるくらいなら死を選べ」とか、「オレは関係ないけど悪い事で儲けてるから反対!」・・・と聞こえます。転売批判自体は、その通り確かに清く正しい意見でしょう。ですけど・・・

 ・・・とはいうものの、世の中重要なのは心情よりも理屈ですので「それでも転売はダメダメダメ!」と頭に響く電波の声に一つずつ答える事とします。

転売ヤーが儲かるからダメ!

 どの辺が法的に不当なのでしょうか? 「投機だからダメ」という事なら、そうおっしゃられる方はこの国に住むのは向いていないと思いますので、株も商社も存在しない国家に移住される事をおすすめします。さしずめ北朝鮮なんておすすめですよ・・・。なお「法の抜け穴で不当に儲けているからダメ」とおっしゃる方もいると思いますが、不当な抜け穴の定義は特に見当たらない様なので、そう思わない人や「抜け穴上等」と人もいるというだけの話です(そういえば「株券百分割」って、抜け穴と言われどもさほどのバッシングはされなかった様な)。
 ただし、「オタクのお祭りで投機をされるのは不快だ」という意見でしたら一理あります。同人には資本主義の論理と異なる面があるためで、詳しくは後で述べます。

主催者が嫌がってるからダメ!

 はあ、それは確実にそうですね・・・。ただ、ちなみに「2006冬ワンフェスカタログ」001頁の入場者への注意事項には、「転売禁止」の文字はありません。もしかすると別の頁で言っているのかもしれませんが、容易に見つからないならそれは言っていない事と同じです。まあ「不文律(ローカルルール、モラル、マナー)」も大切だと言われればその通りですが、知らなかったと言う人・・・つまりそうシラを切る人をそれで裁くことは無論できません。


版元が嫌がるからダメ!

 はあ、それはまあそうですね・・・「版元を刺激すると当日版権制が危なくなるからダメ」というのは正論です。だからこそ「この制度は脆く危うい状態なのだ」とああも毎度強く繰り返される訳ですし、これには言い返す言葉を持ちません、以上おわり・・・と往生際が良ければ毎度波風立たずにすむのですが、そうではないので暴言を続けます。禁止の理由が明示されないのならば「それは問答無用の一方的な言い分」であり、これすなわち両者の間に絶対的な力の差がある事を意味します。いわば「理由はともかく日本はアメリカに逆らっちゃダメなんだよ!」とか「特攻して散れと命令されたからそうするしかないんだ!」と同じです。
 同人ガレキ(当日版権)とは、本来存在を許されざるべき物であるが、販路を限定する条件付きで首根っこを押さえられたままで、おめこぼしとして生きながらえさせて頂いている物にすぎません。つまり「常に危うい状態なのだ」の後に続く言葉は、「決してジャイアンを刺激せず絶対服従するしかない・・・本来我々は毎日ぶんなぐられていて然るべきだが、おめこぼしで許されているにすぎないからだ」なのです、たぶん。
 まあ、多くの版元が転売を嫌っているであろう事は「主催者側がさんざん注意している事」及び、「噂を聞く限りではあちこちが嫌がるらしい」という点から推測はできるのですが、自分の頭では単なる一方的な理屈に思えます。理由の具体的説明は無いので想像するに、他の商品を転売するなと言っていない以上、やはり「当日版権品だからダメ」という所でしょうが、ダダをこねているのは単に「当日版権ガレキの流通をコントロールができぬ事が問題なのだ」という曖昧模糊とした物でしかなく、皆はそのボンヤリした物にひれ伏しているという・・・。
 また、転売するなという声は全ての版元から聞こえてくる訳ではないので、もしかしたら転売を喜んでいる版元があるという可能性は? ここで「そんな所があるはずがない」とおっしゃられる方は多いと思いますが、もしかしたらニヤニヤしている所だってあるかもしれませんよ。例えば、ワンフェスでお披露目された某×人形が海外のオークションで4千万円で落札された、すなわち転売された時みたいに・・・
 なお、「転売される」という事自体が「イメージ的損害」と受け止められる可能性はありますが、転売と中古品売買との本質的な差が無いためここでは考えません(「ネットオークションで売買される」事自体に関しては、アングラなイメージは年々減っており、ヤフーや楽天がちゃんとした企業として認知されている現在、それによるイメージダウンという言い分は説得力を持ちえないでしょう)。

不勉強ゆえか版元側が転売を嫌う理由がわかりませんので、御存知の方がおられましたら無学な私に御教授頂けると幸いです。ただ元々「同人ガレキ」が脅威である理由があります。散々言われている事なのですが、本なら同じ物は2冊となく、原作もエロパロもやおいも一冊一冊が全くの別物であり代替ができないものの、立体の場合はアイテムがメーカー品とバッティングを起こし「同人の方が出来がいいから正規品はイラネ」という事が頻繁に起こりえます。そして更に、ガレキの生産が手作業であるという性質上、大メーカーと同人の格差が少ないため対等に近いライバルとなりえます。
 また勝手な想像なのですが、もしかすると考え方の根本的な相違があるのかもしれません。もしガレキをイベントにおける特別のファンサービス(プレゼント、オマケ)」だと考えているならば「一過性のお祭り性」を重視する気持ちはわからなくもありません。祭りは終わるからこそ楽しく、花は散るからこそ美しい様に、一回きりのライブ性を大切にし録音で聞かれる事を好まないDJは多くいます。しかし、私はガレキを「後世に永久に残すべき美術品(文化)」だと認識しています。不要となった絵を誰も引き取ってくれないならゴミに出すしかありませんが、「私の描いた絵を誰にも渡すな、売るくらいなら焼き捨てろ!」と主張する画家の存在は寡聞にして知りません。

例え法で許されていようが、マナーを破る事はダメ!

 マナーと言っても、この場合エチケットというよりも「祭りの不文律」であり、ローカルルール・・・いわゆる「村の掟」の様だと言えます。よってまあ、村人のためには守るにこした事はありませんが、それに反する「オレの掟」とぶつかった場合に一体どちらを守るべきでしょうか? ここで「当然、村の掟の方が大事だ」とみなさんが言われる事と思います。ならば、民主主義の世は「数の力」が正義ですから、よって「オレの掟の支持者」が村人の数を上回れば問題はない訳ですよねえ・・・という訳で、例え話をします。
 『とある登山狂の美人女性がいました。しかし、国内の全ての山を踏破するという念願をようやく達成せんとする目前に「女人禁制の山)」が大きく立ちふさがります。彼女は村人達に登りたいと懇願しますが、当然けんもほろろに追い返されました。しかし奇跡的偶然によりその様子を休暇で旅行中のテレビ局のプロデューサーが見ており、すぐさま日本中で・・・以下略。』
 まあ要は「村の掟もオレの掟も本質的に同じ」だという事です。そして、例え村の掟を世論の力をもってして変えたとて、それは単に「強きゃ黒でも白になる」にすぎません。そんな「力が正義」の社会では弱いことは悪でしかなく、奇跡(ありえないから奇跡なのですが)でもない限り「泣き寝入りか掟破り」しか道はありません。ですが幸い現実の社会はそんな事はなく、声の大きさや多数決や身勝手な俺ルールで正邪が決まる訳ではありません(空き地なとで良く「ここに無断駐車したら罰金○万円を頂戴する」という立て札を目にしますが、そんなものは法的には無効です)。そして、2つのオレの掟がぶつかった時に、どちらが理不尽なのかを判断する根本の指針となるものが「法律」です。そして法律の法律・・・メタ法律である憲法には、「男女平等」の文字が書かれています。


転売は損害を与えるからダメ!

 転売は「金が儲かる=投機」である事がダーティな印象を強めていますが、中古品売買よりもクリーンです・・・と言うと「また血迷った事を・・・」と皆様思われる事と思いますので理由を説明しますと、生産者に与える損害が直接的な物ではなく間接的だからです。
 ガレキ転売は転売品購入者の負担となった(ガレキ本来の価格に上乗せされた)分、その懐を減らした事で同版元の類似商品の売れ行きに影響が出る可能性があるという「間接的損害」のみですが、中古品売買はその商品自体の売れ行きを直接阻みます。
 もし私が同人誌を転売するなら、その前にブツに目を通す・・・つまり「使用」します(抜くとも言う)。その中で「これはいな・・・ただし手元に置くほどじゃないけど」と思ったらスキャンで保存します(海外製のとあるスキャナを使えば90度開いた状態で傷めずにスキャン可能)。CG集なら当然ピーコ、マンガを古本屋に売るなら読んだ後、ゲームを売るならプレイの後、食玩を売るなら鑑賞した後です(ダブり除く)。しかし、ガレキはせいぜいパーツを眺める事くらいしかできませんし、パーツフェチがいるという話も寡聞にして聞き及びません。
 世間の常識では「転売・・・すなわち買った物をそのまま売ることはダメだか、不用品を処分する事は良い」となっています。前者は儲けを生むのに対し、後者は大抵買い取り値が売値より下回るため儲かりませんが、物によってはプレミアが付いて儲けが出る可能性もあり、つまりこの両者に本質的な区別は付きません。そして、生産者に直接的な損害を与えるのは後者であり、これを無くすためには、古本屋に売る事を妨害する(法で買取規制させる)か、「一度読むと消えるインク」を開発・・・といった妄想手段しか手がありません。
 以前より、大勢の漫画家と出版社が「新古書店(=ブックオフ)はマンガ文化の敵だ云々」とキャンペーンを張っていますが、そもそも「新古書店」なる言葉は彼らの作った造語であり、法的には他の古本屋と変わる所がなくクリーンです。つまり「いいがかり」ですが、現実にダメージを受けているからこその切実な訴えだというのはわかります・・・要は今までの法律が古書店側に有利であったにもかかわらず、ブクオフ以外はそれに気づかなかったという事なのでしょう。
 しかし彼らとて、「本を古本屋に売ったら法律違反」などと純真な子供達にウソをつく事はしていません。子供相手になら「法の抜け穴をわざわざ教える必要はない・・・世の中には嘘を見過ごしてでも守らねばならない物がある」という理屈もアリかもしれませんが、まあそんな事をすれば喧嘩を売られた相手も黙っちゃいないでしょうし。あ、ちなみにワンフェス等に行った事の無い人は「きっとプラモ少年達が詰め掛けてるんだろうなあ」と思われているかもしれませんが、実際に会場にいるのはどこを見てもイイ大人ばかりですので念のため・・・。

本当に欲しい人に行き渡らないからダメ!

 転売された物を買う人(イベント弱者)は「本当に欲しい人」ではないのですか? 「ちゃんとイベントで直接買う人だけが本当に欲しい人なのに!」というのは、早い者勝ち競争に敗れた強者の単なる泣き言です。オークションの「最も高値をつけた人こそが本当に欲しい人」という制度こそ公平な物だという世間の常識は、オタク界とて変わりません。ちなみに経済理論的には、「転売は全体の利益を損なう事はなく、むしろ向上する事が多い」んだそうですよ・・・先の同人誌によると。


ディーラーが嫌がるからダメ!

 うーん、それはまあそうですね、我々は「人の嫌がる事をしてはいけない」と小学校で道徳の時間に教わりましたし・・・とうなずいた方は、今後中古品を売り買いする事を一切止めて下さい。作った人が嫌がりますから。
 また、転売されて意欲が削がれるディーラーは多いでしょうが、「個々のサークルがどう考えているか」は、表明していない限りは不明です。実際に転売を肯定するディーラーは見当たりませんが、もしかしたら転売を嫌がらず、オクで高値が付く事を喜ぶ人は案外多いかもしれませんよ。例えば、ワンフェスでお披露目された人形が海外のオークションで4千万円で落札された、すなわち転売された時みたいに・・・
 ・・・と屁理屈はさておき、そもそも、売り物の数が充分にある場合には「より多く売れる」訳ですから転売はさして問題にならないはずです。即売会に来る機会の無い人の手にも届く事は、むしろ歓迎すべき事でしょう・・・ですが実際はそうではなく、需要に対する供給が少ないからこそ、それを狙って転売ヤーが群がる訳でして・・・。
 これが私が考える「転売の最も悪い点」であり、転売ヤーの存在は固定ファンの買い逃し率を増加させてしまいます。単なる一般商品の激レア物ならば、「所詮競争は平等、早い者の勝ち」と言い放つ所ですが、同人は生産者と買い手の距離が極めて近い「対面販売」であり、「同好の士とのコミュニケーション要素」を伝統的に重視します。
 最終的にキットを手に入れる人の総数は変わらずとも、会場での購入者がディーラーのファンではない(オタクですらないかもしれない)という状況は歓迎できる物ではありませんし、フェスティバルという祭りの場から見てもイヤ〜ンな感じは否めません。すなわち問題点は転売自体というよりも、「テンバイヤーに買い占められてしまう事が、ディーラー側と買い逃したファンの精神衛生上良くない」点にあります(まあ当事者ではないのでこれも推測…もとい、妄想にすぎないのですが)。
 しかし、コミケのと異なりガレキ即売会にプロとアマの違いはありません。ヌルかった同人界に一般社会の厳しいルールを(途中から)持ち込んだのがワンフェスであり、すなわち当日版権制度だと言えます。ですがそれが表面化する事が無いのは、オタク側の認識は「同人」のままだからです。買い手側がディーラーの数よりずっと多い上、プロ意識を持って活動しているディーラーの比率も多くはないでしょう。まあこれは当然で、それで喰ってるディーラーなどごくごく一部でしょうし、厳しいルールも押し付けられた様な物にすぎないからです(ルールの是非を問うている訳ではありませんので念のため)・・・という訳で、この後の駄文は「同人」という側面をコミケと対比する事で掘り下げてみます。


『珍論・資本主義のワンフェスと同人誌、 共産主義のコミケとガレキ』

 一般的にワンフェスは「コミケの立体版」という視点で見られているのですが、理念では資本主義と共産主義ほどに異なる物です(・・・というトンデモ論をふと思いついたので、以下に強引に理屈付けを行います)。同人誌即売会の世界では入場者の事を「一般参加者」と呼びます。売り手側である「サークル参加者」と単なるの買い手が同格に参加者と扱われるのはヘンな感じがしますが、とにかくコミケ(及び無数の同人誌即売会)では昔からそういう事になっています。
 ただしコミケ文化圏と隔たりのあるワンフェスでは「一般入場者」・・・だとばかり思っていた所、あさの氏がパンフで「一般参加者云々」と発言していたのを目にしたので、気になって昔の浜松ワンフェスのパンフを掘りおこし確認した所「一般参加者」が使われていました。よって本来はこちらであり、現在では時に応じて都合よく両方が使われる、という事なのでしょうかね・・・まあ元々「フェスティバル」なので、「参加者」であっても別段文句は言いませんが。
 また同人誌の世界では「販売」という言葉は使われず「頒布」と呼ばれ、同人誌の価格は「定価」ではなく「頒価」という言葉が使われます(まあ同人誌という物は基本的に時価なので「定価」という表現は似合わないのですが)。この呼びかえの存在は重要な点でして、「同人活動は商売ではない(同人誌は商品ではない)」という意味が内包されています。ならば同人誌の売買が商売でないのなら一体何なのかというと、何でも「カンパされた額に応じて本を進呈する」んだそうです。すなわち同人誌の値段とは本来存在しない物だという・・・「おいおい理想論にも程がある!」と思わず突っ込みを入れたくなりますが、コミケのアングラ性を考えれば「隠れ蓑として」そう主張する事はむしろ当然でしょう。そもそもコミケは「違法海賊商売の幇助組織だ!」といつ準備会が告訴されても不思議ではありせんから、当然商売だなどと言えようはずがないのです(なお良く誤解されているのですが、法的には「販売」だろうが「頒布」だろうが無関係なので「頒布と言い変えておけば安全だ」などという事はありませんので念のため)。
 ちなみにワンフェスや立体系即売会では、売り手をディーラー(商人、販売業者の意)、机をブース(屋台店、模擬店の意)と呼びますが、同人誌即売会では売り手を「サークル」、机を「スペース」と呼んでおり、この事からも「商売をイメージさせる語が払拭されている」事がわかります。

 という訳で、コミケ代表の理想論をそのまま呑めば「商売ではなくアマチュアリズムにのっとった自主的なファン活動としてのコミュニケーション」が(欺瞞はあれども)コミケの主体、スピリッツだと言えます。よって「転売はコミケ精神に反する行為」だと言える訳であり、すなわちワンフェスとの本質的な違いがここにあります。ワンフェス(=当日版権制度)は、法的にはコミケの様な違法・・・もとい、グレーゾーンのフリーマーケットなどではなく、通常の商業活動と同等のクリーンな物ですが、ここがミソです。売り手の意識はどうあれ商業活動であれば、「コミケ理念とは別の物」だと言えます。また主催者側の考え方も、コミケは決して競争を煽らず「参加する事に意義がある」と言わんばかりのアマチュアリズムに基づいた完全平等主義(ちなみに1サークルは半机しか持てず、合同という裏技を使っても1机までと制限がある)ですが、海洋堂は「売れる事が正しい(ヌルい奴は去れ)」というニュアンスの事を言っており、双方のスタンスは「ファン活動とプロの差」ほどに異なります。ちなみに同人誌サークルが新刊の発行が間に合わずとも「落ちました、メンゴ・・・」の貼り紙一つですみますが、ディーラーが当日版権の完成見本を落とせば版元に始末書を提出しなくてはなりません(という訳で、アマチュア気分全開のディーラー達に誌面で説教を垂れたりしないといけない訳です)。

 ただし、これはあくまで主催者側の考え方(アマチュアリズムの比重等)が大きく違うという事にすぎません。ガレキディーラーの大半がコミュニケーション要素よりも商売を重視するならば、メジャーキャラの入れ食い状態となりマイナーアイテムに固執するディーラーなどほとんど存在しないはずですが、実際はそうではありません。また建前上は商売ではないコミケには、商売としてやっているとしか思えない様なサークルは数多くあります(要は流行りネタにすぐ乗り換えるエロ大手)。そしてそもそも根本的な点で、主催者側の態度とは正反対に、同人誌は資本主義的であり、ガレキは共産主義的であると言えます。
 オフセット同人誌というのは初期投資に金がかかりますが、印刷部数が多ければ多いほど単価が下ります。つまり大手のサークルはどんどん儲かり、弱小は印刷費すら回収できずどんどん損をするシステムであり、勝ち組と負け組の格差(儲け)が大きく開くという冷酷な資本主義的側面を持っています。ですからその現実を直視せずにアマチュア主義万歳(参加する事に意義がある)のキレイゴトを守るためには、主催者は必然的にプロを(建前上)締め出して全サークルを平等に扱わねばならないのだと言えます。
 それに対して、ガレキの複製はコピー本を作るかの如く一つ一つが手作業であるため、大手も弱小も平等です(まあ中国工場に大量発注という裏技を使えば結構安くあげられるのかもしれませんが)。更に版権物は版元から必ず個数制限を受けるため、大量に売って儲けることが元より阻害されています。ただし、少量を確実に売りたい者はこの不利を被りませんので、つまりは強者も弱者も平等な共産主義的システムだと言えます。よって大手ディーラーがやる気を無くしてしまわないためにも、主催者側が「プロもアマも関係あらへん、売れる事が正義なんや」と強調せざるをえないのでしょう(まあ海洋堂は関西の企業ですから性格もあるのでしょうけど)。

 では最後に、私のガレキ転売擁護論(論というより単なる暴言ですか)の切り札を出します。中古販売と転売に本質的違いが無いことは既に言いましたが、ワンフェスでは中古品のみを販売するディーラーがかなりの割合を占め、大半は「なかなか結構なプレミア価格」を付けて売られています。それが「自分のコレクション安価で放出」でないのなら、仕入れて売っている・・・すなわち転売ですが、本人以外の第三者が両者を区別する事は不可能です(つまり差はありません)。まあ良心的価格で放出もあるにはありますが・、なかなか見当たらなんですよホント・・・(理由は無論、専業ディーラーだけでなくチケット目当ての幽霊、ダミーディーラーが多いって事でしょうねえ)。よって会場内で「古い当日版権ガレキ(当日の物は都条例違反に触れるためダメ)」をコッソリ売っている可能性も否定は・・・。つまり、「転売禁止」というワンフェスの主張自体にダブルスタンダードが内包されています。
 コミケでは中古品売買は禁止されており、他の同人誌即売会も私の知る限り同様です。しかし、ガレキ即売会では、ゼネプロ開催時代より中古品は当たり前に売られています(ディーラーでも売っている所は多くあります)。ナニ当たり前の事を言っているんだよと思われるかもしれませんが、「単にそういう事になっている」のではなく、コミケ(同人誌即売会)とワンフェス(立体物即売会)の「理念の違い」がここにあります。中古品売買はコミュニケーションではなくゼニもうけですから、商売を拒絶するコミケの理念と相容れるはずがないのです(コミケは一応会社組織なのですが、事実上のボランティア運営です)。
 なお、ワンフェス以外の立体系イベントも大抵が企業が主催して版権を守る姿勢で運営されますが、同人運営の弱小イベントには別の姿勢で運営される物があり、そこは大昔のワンフェスの様な無法地帯です(よって良く口撃を受けています)。しかし、そこでは中古品を売る事は禁止されています。これは立体系では珍しい事なのですが、その理由は無論、あえて繰り返すまでもないでしょう。


「ワンフェスのルールこそガレージキット界全てが遵守すべき唯一の掟」と、アメリカ帝国の提示するグローバルスタンダードのごとく考えている人が圧倒的に多い様なのですが、他の考え方もアリだと思います。コミケとは異なるワンフェスの版権重視姿勢は、企業が主催する大型イベントである以上は当然の事ですが、同人運営の小規模イベントにおいては、それに対応した別のルールが適用されて然るべきです。まず、企業でない個人のイベンターが当日版権制を導入したイベントを開くこうにも事実上不可能です。まあ法を遵守する「オリジナルオンリー(及び版権フリーの一部エロゲキャラ等)」の即売会はあるものの、それしかやる事ができないというのは、同人界を(ほんの多少ですが)知る物の目には不自然に思えます。またそもそも、ワンフェス自体が「潔癖な出自」のままであそこまで大きくなったのではありません。つまり、貧乏国家だった頃に散々パクっていた国が、経済大国になってから「お前らパクるなよ知的所有権を守れ!」と説教するのは、確かに正しくはあれども説得力に欠けています。
 なお、「無法地帯」とか言うとヤバゲで面白そうだと誤解されそうなのですが、開場して少しの間(2つのサークルに行列ができてからササッと消えるまで)は「別の空気」が流れるものの、基本的にはマターリした弱小イベントです。あ、ちなみにそこで5年ぼと前から毎回怪しげな帽子を被ってハサミで遊んでいるヘンな人に心当たりがありましたら、多分それが私です。 

 2006/3/26(2006/4/18微修正)


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