ガンダムゲームMS黒歴史-6

いちご大福にオリジナルMSを見た!-6
完結編

角川書店「電撃ホビーマガジン2001年12月号」P58

アニメーション、ゲーム、プラモデル。各メーカーのスタッフが参加して、「納得のいかないオリジナルモビルスーツ(OMS)」について語るといった趣旨で5回にわたってお贈りしてきた「MSエキスパート委員会・座談会」。送り手側の、これまで培ってきた仕事を否定するかのごとき発言は、内外に大きな波紋を呼びました。その最後の締めくくりとして、企画発案者である堀口滋氏(サンライズ)による、この企画の本来の意図と経緯を語ってもらいました。


●座談会を終えて
 アニメを読んだり、スポーツを読んだりできるのが専門誌の醍醐味かと思いますが、この『電撃ホビーマガジン』誌でもプラモを読むことができます。ところが、読み物としておもしろいかどうか、読みやすいかどうかは、読んでもらうための工夫が必要なわけで、伝聞やとくに会話を読み物に変換するのは難しいことです。「いちご大福」は、扱った情報の公平性を欠いた点や、一方的とも取られる言いまわしの印象、さらに言えば当時の事情に対する配慮などの諸々のニュアンスが行間に消えたりと、およそ参加当事者の意図を的確に反映できたとは言い難く、読者の方々、ならびに関係各位に一部不快感を与えたであろうことをまず、お詫びいたします。

 もうおわかりかと思いますが、この連載はPS、SWAN等ゲームの発売キャンペーンの一環として企画提案したもので、しかし諸般の事情から連載自体が伸びてしまい、ゲームのオリジナルMS(OMS)に結実すべき流れも起伏もちょっと乱れて、プロモーションとしてはわけのわからないものになったかも知れません。目指したとは言え、必要以上に企画が転がりすぎたのは私の力不足ですね。

 製作者が自らの製作物も含めて自己賛美に終始しても気持ち悪かろうと、もとよりバランス取りのネガティブ発言誘発剤としての、もしくは否定できない不自由さを軽減するきっかけの「いちご大福」が予想以上に効いたのか、会議に花が咲き肝心要のOMSに話が行く頃には、もう参加者のテンションも下がっていたというのもまた、予想外でした。
 わざわざゲームのデザイナー片桐氏に同席頂いたのは、デザイン開発の経緯を説明しつつゲームの面白さの紹介や、つまるところ「そういう発注だったのだ」と製作者側の都合の一旦も垣間見え、同時にその発注精度如何がデザインの根幹に影響してしまうこともありうる自戒も込めてのことでした。アニメなら監督かプロデューサー、じゃあOMSは?という話です。

 話し方、書き方、そして読ませ方にもよるのですが、会話のニュアンスや微妙な言い方、座談会の雰囲気を抽出した文章の難しさに、参加当事者一様にちょっと青ざめたりもしました。また読者の反応もさまざまで、我々が座談会終盤で触れるべきであったここ2年ぐらいのOMSへの強烈なネガティブ反応があったりと、いろいろと参考になりました。
 明確な主旨ではないにせよ届かなかった座談会企画の猛省をしつつ、無理を押してのOMSをやらない選択肢と、全く違う方向性のデザイン開発が、ずしりと重々しく天秤で揺れている今日この頃です。

 堀口滋(サンライズ)

●座談会掲載に至る経緯
 2001年春、サンライズの堀口氏よりこの夏以降にリリースされる『SDガンダム ジージェネレーション ギャザービート2』および『ジオニックフロント』のプロモーションとして、それらのゲームに関するOMS紹介を兼ねた座談会の企画が持ち込まれました。それも単なるプロモーションではなく、常に賛否両論が語られる、そうしたOMSについて、あえて送り手がさまざまなOMSを斬ってみせることで、ユーザーの率直な反応が見られるのではないだろうかという趣旨のものだったのです。
 
 そのため各スタッフはランダムに提示されたOMSについて重箱の隅をつついてでも納得のいかない点を洗い出さなければなりませんでした。限られた誌面にそうした一言一言を取捨選択して掲載していった結果、「本当は嫌いじゃないけど敢えて言うなら…」といったニュアンスの大半が失われてしまい、過激な発言のみが残されてしまったことは編集者としてのバランス感覚の欠如だったと反省しています。その結果、今回の企画で不快感を感じられたであろう、読者の皆様ならびに関係各位の方々には、誌面を借りて深くお詫びをさせていただきます。申し訳ありませんでした。

 ただ、この企画を行って救われたのは、アンケートやお便りでこの企画に対するお叱りの声やOMSそのものの存在を幅広く肯定される方のご意見を非常にたくさんいただけたということです。こうした方々がいらっしゃる限り、ガンダムワールドはこれからもさらに広がりをみせてくれるはずだと、感じさせていただきました。なお、これまで募集させていただいた『君の嫌いなOMS』に関するアンケートは、お送りいただいたすべての内容を堀口氏にお渡しし、今後のOMSデザインの参考資料とさせていただくことで、誌面での発表は控えさせていただきますので、ご了承のほどお願いいたします。

 柴原宏則(編集部)
2004/12/19
12/20修正

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