角川書店「電撃ホビーマガジン2001年10月号」P52
MSエキスパート委員会(仮称)、2年間の足跡各種、(〜中略〜)連載の第三回目は少しだけゲームを離れた機体を中心にお贈りしよう。MSエキスパート委員会(仮称)、スタッフ バンダイ・ホビー事業部:川口克己、狩野義弘 バンダイ・ビデオゲーム事業部:稲垣浩文、牛村憲彦 バンダイ・SWAN事業部:堀内美康 伸童舎:渡辺利浩 ライター:岡崎昭行 サンライズ:堀口滋(大明神)、森田彰啓 座談会特別参加 デザイナー:片桐圭一郎 電撃ホビーマカジン編集部:柴原宏則 |
●戦慄のブルー渡辺:『ブルーディスティニー1〜3号機』(★)が出ました。稲垣:『戦慄のブルー』のときは「ガンダムはアムロのだけで他はガンダムではない」という設定でした。 岡崎:結局「陸戦型ガンダムなら2〜3機回してもいいだろう」ってなったんですよね。 堀内美康:ゲームを作るときはフィルム作品から機体を選ぶんですが、ブルーは扱いに困るんです。ゲーム専用のはすなのに、他のフィルム作品と同じように扱っちゃうんですよ。 森田:それだけよくできてるっていうことですよ。ゲームから出た機体としてはいい例なんじゃないですか。 堀内美康:でもこれを「本物のように扱っていいのか?」というのが疑問なんです。 堀口:ブルーは設定が非常によくできてて、複雑なガンダム世界のお約束のどこにも当たらずうまく嘘をついたんじゃないかな。 柴原:ブルーの良くできてるところは最初はジムに乗るところだと思うんです。「ジムならありかな」というところから入って、最終的にガンダムになる。 稲垣:僕自身もゲームとはいえこれ以上ガンダムを増やすのが嫌だったんです。「じゃあどうする」っていうところから考えたんです。 岡崎:最初はNT‐1のプロトタイプのジムという提案だったんですが「それは変だ」と。それで「陸戦ガンダムなら…」ということになったんです。 渡辺:ちょうど『08小隊』があったからね。うまく嘘がつけたんですよ。 柴原:ピクシーの嘘に比べるとブルーの登場は自然だったというか…。 稲垣:そうですね。当初EXAMシステムの実験をジムでやってたけれど、ジムじゃオーバーヒートするから陸戦ガンダムの胴体を使って頭はEXAMが搭載されたジムのまま、というのがブルー1号機なんです。で、2号機からは「最初からガンダムで実験しよう」ということでガンダム頭になってるんです。 片桐:座談会の主旨からすると「ブルーはOK」だっていうことですか。 堀内美康:OMSなのに『ギャザービート』でも結構ストーリーの中心的な役割になってて、「それでいいのかな?」って。 堀口:それこそ“ファンによる自浄作用”が働くんだと思うんです。その点でブルーはジョニー・ライデンやシン・マツナガ以来の“OMSとして完全な成功例”といっていいんじゃないかな。 岡崎:『MSV』以来、いろんなOMSが登場したけれど、その軌道修正が必要だと感した頃の作品ですからね。 ●『ステイメンのコア・ファイター』(★)堀口:これはデザイン的にはカッコイイんですが、設定上どうかと思うんです。狩野:と言うと? 堀口:これがボツ設定だったとか、模型のプレイバリューを上げるという点は置いても、あまりにも唐突なんじゃないかと。 狩野:具体的にはどういうことですか? 堀口:GP03はフィルムに出たものがすべてなんです。オーキスとのドッキングや腰のバインダー…。すべてが「ステイメンは宇宙用である」ことを示してます。そこに大気圏内飛行を意昧する“翼”を持ったコア・ファイターがドッキングするのは、基本設計的に矛盾すると思うんです。ガトルやパブリクのように富野監督の『ガンダム』では宇宙用は有翼機じゃないんですよね。そこがこのコア・ファイターでは見逃されてると思うんです。 片桐:翼がなければ問題ではないと。 堀口:そうですね。私としてはこれがフルバーニアンのような機体であれば宇宙用として納得できます。最初にこれがデザインされたときは他の要素を含めたガンダムシステム内のものだったかもしれないけれど、フィルム化されたものとしてのステイメンは、あくまでオーキスを含めたシステムの一部。その中ではあのコア・ファイターは使いようがないんですよ。私も最初はなんの違和感もなかったんだけど、ふと考えたときに「これは恐いな」と思ったんです。小さなことかもしれないけど、ロボをMS、破壊光線をビーム・ライフルと言い換えた「ガンダム」の設定観の理念から遠ざかるんじゃないかと。 岡崎:それはGP03の機体番号からも明らかです。ゲームではデータ処理のためにオーキスとの合体状態でGP03Dとしていますが、本来は合体状態がGP03。ステイメンになったときがGP03Sなんです。つまりGP03はデンドロビウムが基本なんですね。 川口:ということは「ステイメンに陸戦型のプランがあった」とすればあのコア・ファイターでも問題はないと。 堀口:問題がないわけではないんですが、私はすごく納得できます。そもそもテールバインダーは陸上では要らないはず。それが陸戦型として納得できるユニットに換装されていればいいだろうということです。GP03が宇宙に出ればフルバーニアンになる。それが『0083』の世界観なので、ステイメンにもそれは適用されるべきなんです。 片桐:つまりこのコア・フファイターはGP03に「陸戦型のプランがあったかもしれない」という可能性を付加してしまったと。 渡辺:でもね、フィルムをよく見るとウラキはルセットからGP03の資料を見せてもらってるんですが、実物を見たときに「コア・ブロック・システムじゃない!」って驚いてるんですね。そこからあの資料の中にはコア・ファイターがあったであろうことが読み取れるんですよ。 堀口:すごい、それはナイス!なるほど、さすが渡辺さん。 柴原:最初から計画されてたんですね。そうなると模型の展開としては面白いですね。立体化の幅が広がりました。 ●M‐MSV牛村:『MS‐04』(★)です。これは…?柴原:プロトタイプザクですね。たしかSD主導で始まった…。 川口:もしくは大河原邦男コレクション。 渡辺:M‐MSVはその存在自体がかなり危ない。というのも、SD主導のガシャポンにはかなり綿密な設定が決められて「MS‐05の前に“04”がある」という“通例”を確立してしまった。さらにその時期の『F90』『F91』のラインがそのまま過去のMSにスライドバックされてる。だからM‐MSVそのものが嫌だと言ってもよかったんだけど。 川口:これは“デザインの整合性がとれてない”ということが最大の問題なわけだ。 渡辺:それよりも当時のオモチャ開発担当者によってMSVの合間が埋められてしまった。数字が空いているところにドラマのないまま「とにかくニューアイテムを出す」ことが優先され、手段と目的が逆転したアイテムが投入されてしまった。今に続くその通例の最初がこのM‐MSVだったと思うんです。 堀口:確かにこのデザインはガンダム世界における一年戦争の先を行ってますよね。 渡辺:この機体に関する設定がキャプション程度のものなら問題は小さいんですが、それぞれにレポート用紙半分以上の文章が書かれてて。それ自体がその後のバンダイ発のOMSのフォーマットにもなっているという。まあ、ウチ(伸童社)もその尻馬に乗ってるんですが(笑)。 川口:仕事のシステムとしては非常によくできたものなんだけどね。 渡辺:グレーゾーンの段階を細分化した諸悪の根元ともいえるんですが。 ●ドリルガンダム?堀口:もし仮に『ガンダム』が52話まで続いたとして、そのときはアッグシリーズが出てくる可能性があったわけじゃないですか。片桐:実際『ZZ』には出てますしね。 堀口:でね、ジオンは基本的に宇宙移民で、すでに地球のことをよく知らないまま地球侵攻用の兵器開発をしてるわけですよ。その最たるものがアッグじゃないですか? これは一体どうするつもりだったのかと。 岡崎:ジャブローの地下を掘って攻める。 堀口:そうですよね。で、その計画を察知した連邦軍が、これに対抗するガンダムを造っていたとしたら! というわけで、ドリルガンダムはどうだろう? 一同:ダメだよ。 川口:それならGドリルでしょ。 堀口:いやガンダム本体にドリルをつけて、いざ地中を進むときは変型するんです。だって水中用ガンダムが受け入れられるなら地中用もありでしよ? ジャブローじゃなくてもグラナダを掘り進むとか。 柴原:じゃあ、アッグのようにガンタンクの両腕にドリルをつけるというのは? 堀口:それが中途半端の始まりなんですよ。どうせやるならとことんまでやらなきゃ。アイデアはとんでもないけど、デザインとしては「ちゃんと掘り進める」ものにすればいけるんじゃないかな。 渡辺:その時点でアッグのドリルはダメ。 堀口:アッグはちゃんと考えられてて、実際には掘りながらじゃなくて溶かしながら進むんだよね。ドリルもスクリューじゃなくてピット状になってるし。 柴原:アッグシリーズは近藤和久さんのマンガでも出てきてますしね。 狩野:やっぱり本体がドリルじゃないとだめですか? 例えば新型武器でガンダムハンマ−の先端部がドリルになってるとか。 堀口:いや、それも男らしくない!(笑) 渡辺:そもそも地中を進んでいくこと自体に戦略的価値はないでしよ。 柴原:設定に無理がありますよ。 堀口:私が言いたいのはそういうことじゃないんです。当然、これまでに生み出ざれてきたOMSも、当時の担当者がゲームの内容を考慮しつつ、それにあわせて設定やテザインを発注してきたわけです。でも、それらの作業がオフィシャル設定と同じベクトルで行われてきた結果、テザインや設定だけが先走りして、グレーを細分化することになったんだと思うんです。もちろん、これまでどおりの方向で作業を進めることも大事なんだけど、ゲーム内容や機体によっては設定やテザインについても明らかに黒と分かるものにしてもいいと思ったんです。ほら、ガンダムがドリルに変型したら、それがオフィシャルな宇宙世紀の機体だとは誰も思わないでしょ。 森田:そういったグレーが黒かのアナウンスまで含めて委員会(仮)が推し進めていかなきゃいけないというわけですね。 柴原:それでは、次回は『ジオニックフロント』を中心に話を展開させたいと思います。 (★)のついた機体が大福に名前の書かれたものです。 |
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