ガンダムゲームMS黒歴史-3


いちご大福にオリジナルMSを見た!-3
MSエキスパート委員会(仮称)・特別座談会(第三回)

角川書店「電撃ホビーマガジン2001年9月号」P84〜85

MSエキスパート委員会(仮称)、2年間の足跡
各種、(〜中略〜)連載の第三回目は『G GENERATION GATHERBEAT』シリーズの機体を中心にお贈りする。

MSエキスパート委員会(仮称)、スタッフ
バンダイ・ホビー事業部:川口克己、狩野義弘
バンダイ・ビデオゲーム事業部:稲垣浩文、牛村憲彦
バンダイ・SWAN事業部:堀内美康
伸童舎:渡辺利浩 ライター:岡崎昭行
サンライズ:堀口滋(大明神)、森田彰啓
座談会特別参加
デザイナー:片桐圭一郎 電撃ホビーマカジン編集部:柴原宏則

●Gジェネレーションの逆襲
柴原:さて、今回は第2弾が発売されたばかりの『ギャザービート』シリーズについでてすが。
牛村:すみません、その前にちょっと。オリジナルMSを設定するときに重要なのは、それらを「そのゲームの内容にいかに合わせるか」です。それを考慮しながら開発側から性能やデザインコンセプトを決めてデザイナーに発注を行います。
柴原:その時点での練り込みが足りないのでは?
牛村:そう言われるとそれまでですが、安易に決めているのではありません。それを決めた段階で、デザイナーとのセッションを行います。一発OKのこともあれば、二転三転することもあります。
柴原:名称や設定を大きく変えることもあると。
牛村:前回ヤリ玉に挙げられた「ザク50」もかなり難航し、もっとザクっぽいデザインだったものを、開発側のジャッジとして「あえて大きくザクを外した」ものに決めたんです。それが委員会(仮称)に不評だったのは残念なんですが。
柴原:なるほど。
稲垣:ガンダムは「リアルがベ−ス」というのは開発側も理解してますが、やはりSDとして扱う場合、SDとしてのシルエットを優先しています。
牛村:SD化するとシルエットの区別がつけづらくなります。もしザク50が完全な人型だったり、量産型ビグザムがビグザムと似たシルエットであれば、SDとしては面白くないものになってしまうんです。
堀口:確かにそうだね。リアル偏重でSDとしてのデザイン意図をないがしろにしてネタにしてしまったことは反省したいと思います。

●『Gジェネギャザービート』
岡崎:Ez8宇宙用』。設定上はありえない機体。
森田:逆にこういった機体が『ギャザービート』の方向性を明確にしているのでは?
堀口:この設定にOKを出したのはこれが“絶対にありえない機体”だから。これは明らかに黒なんです。だからこそ、これが『ギャザビ』用OMSの最低ラインになると思ったんです。
川口:ユーザーが「黒だけと好き」か「嫌い」かを判断するにはハッキリした機体だと思います。
柴原:基本設定はムチャでも、「寄せ集めたパーツでムリヤリ造った」部分に納得できます。逆に「専用の宇宙用装備が存在した」というとウソくさい。
片桐:デザイナーは、発注の趣旨に沿ったデザインにしないといけないわけで、みなさんムチャな発注に苦労しているはずですよ(笑)。
堀内美康:ゲームでは話の流れで宇宙に上がるとき、シローが「あれでなんとか宇宙に出られないか」という話になるんです。そこで現地調達したパーツでなんとかしようと。あくまでゲーム内の流れとしては自然に見えるように意識しました。
柴原:模型誌的にはEz8の作例としてこうした改造案というのは出てこないでしょう。そうした発想がオフィシャルスタッフサイドから出されたことに対して「やられた」と思いましたね。
稲垣:プレイヤーがHMCとHACを選ぶのですが、単に「宇宙用のEz8があれば面白い」というだけのアイデアではないんですよ。
渡辺:「まず物語ありき」から機体のアイデアが考えられていると。そうした説得力は必要だよね。
岡崎:ゲームの世界を知らないとダメ。
渡辺:『ギレンの野望』なら「絶対ない!」けど『ギャザービート』ならOKだろうと。

●ギャザービート2
柴原:では『ギャザービート2』に話を移します。
堀口:作例の『スーパーディアス』はどう?
堀内美康:ゲームでは特にイベントはなく出てきます。ディアス好きな人が乗り続けるためのものですね。
渡辺:シュツルム・ディアスみたいな感じ。
堀内美康:本体も頭部の形状やなんかを含めて微妙に変えてて、型式もRMS-099Sということにしています。デザイン的には問題はありませんか?
岡崎:「まわりのシールドがビームを跳ね返す」みたいなスゴイ設定にはなってないんですよね。
堀内美康:普通にダメージを受けます。
稲垣:一定ダメージか加わると外れるとか…
堀内美康:そのくらいはやってます。
渡辺:普通だ(笑)。作例は作りやすいだろうけど。
川口:SDならもっと凶悪でもよかったかもね。
森田:せっかく創ったOMSがさらっと出てしまうのは淋しいので、文字設定上はエースクラス用の機体ってことにしたいですね。
岡崎:元々「バック・ウェポン・システム付リック・ディアス」という発注だったんだけど、それは時代設定に反するので、こういう形にしたんですよ。
堀口:飛行してるときは手を使わずに胸側のビーム・ピストルを自動発射するんだけど、敵と遭遇したらこれを展開するようになってます。
柴原:作例でも動くようにしてもらいました。
渡辺:活躍シーンをイメージしやすいハッタリもあるなら、これは充分OKじゃないですか。
柴原:比較的白に近いグレーとして認められるような気はします。模型栄えするデサインですしね。
森田:名前はもう少しハッタリの利いたものでもよかったかもしれませんね。
堀内美康:なんだか評判が良すぎてこの座談会の主旨にあわないような気がしてきましたが(笑)。
堀口:それでいいんじゃない。でないと委員会(仮称)の意味もないし。次は『ガザレロ』を。
堀内美康:ガザ系の機体ではなくザクレロの流れを汲むNT用MAといった位置づけで発注しました。ガザの名前は後から付けたもの。
森田:これはどのようにゲームに出るんですか?
堀内美康:ストーリー的にはゲーム終盤、敵側のニュータイプパイロットが乗ります。
柴原:ザクレロ系なら鎌がほしいところですが…。
堀口:前方の三日月状の部分が展開してクローの部分からビーム鎌が出ます。基本的なシルエットが決まってから「NT機でビットを持ってても近接戦闘用クローを持っていてもいいだろう」と。
岡崎:実はもともとはゲーマルクのプロトタイプで、という発注だったんですよ。
森田:ゲーム製作側からの発注として、「強い敵をOMSに乗せたい」というオーダーがあると、どうしてもNT専用機になるんです。だからデザインが出尽くしたかな、というのはあります。
渡辺:エルメスからキュベレイまでにはかなりの試行錯誤があったはず。だからキュベレイ寸前、あるいはゲーマルクのプロトタイプという流れのデザインはアリだと思います。
森田:ガザレロを初めて見た方もいますが、最初から知ってたらダメOMSでしたか?
川口:僕はそうでもないかな。
片桐:SDとしての“アクの強さ”もあるし。
堀口:なんかカスタム機っぽいよね。
稲垣:演出的には1機で向かってくるほうが、メッサーラの登場時とイメージが重なっていいかな。
柴原:名前からするともう少しガザっぽさやザクレロっぽさがあってもいいかな。
堀内美康:ほかにはなにかありますか?
柴原:MAですからかなり大きいんですよね。
渡辺:牙の大きさを基準にするとザクレロの2倍以上になるのか。
狩野:ザクレロの肩のマークはどこかにちょこっとでもいいから入れてほしいかな。
堀内美康:これは委員会(仮称)的にはOKなんですか。
堀口:『ギャザビ』のみならOKだと思います。


●グロムリン&グロムリン2
堀口:では『グロムリン2』を。
柴原:これのもとになったグロムリンには“富野ラフ”があるそうですが。
堀口:ネーミング共々、富野監督のものです。
柴原:じゃあ、これは“白”なんですか?
堀口:あくまでグレー。ビグ・ザムとの競合機で、設計図のみが造られた設定で、最終的なクリンナップは片桐さんです。
片桐:富野監督のメモには「植物的な」というのがあったんですが、その要素を入れつつ、できるだけ機械的なデザインにしてみました。
堀口:ではグロムリンの嫌な点というのは?
柴原:機能的には脚はいらないのでは?
堀口:『ガンダム』の中でNT機ではないMAには腕か脚が必要だという判断によるものです。
岡崎:最初に見たときに「ビグ・ザムとブラウ・ブロの掛け合わせだな」と思ったんです。だからデザイン的にも設定的にもOKだなと。
牛村:設定やデザインはいいんですが、一年戦争としては“新しすぎる”気はします。
片桐:全体の流れが20年前のラインと整合性がとりきれなかったという反省はあります。
柴原:さて『グロムリン2』ですが、これはグロムリンが左右にそのままくっついてるわけですね。
堀内美康:以前と同じボスメカかと思ったら、2があるといった感じで登場します。
稲垣:グロムリン2が嫌な理由はひとつ。ゲームではこれに“ギレンが乗る”んですよ。
岡崎:でも『ギャザビ』なら許されるかも。
堀内美康:どうせやるなら、徹底的にムチャをやろうというのは開発中にもありましたね。
森田:『ギャザビ』のそういう点は面白いんですが、ゲームのためのデザインがあとから一人歩きするのが恐いですね。だから生み出す側が「一人歩きすることを想定しつつ設計しなければならない」と思うんです。形だけでなく文章設定を含めて。
堀口:デザイン的には元のグロムリンほどのインパクトはなくなってます。だからといってこれに脚をつけるのは「違う」と。
川口:たしかにインパクトは弱くなったね。
渡辺:ゲームの演出でインパクトは変わるでしょ。
柴原:SDということもあって単体だと、大きさというかデザイン的な巨大感というのはわからないかもしれませんね。
岡崎:『ギャザビ』らしさか抜けた気はします。
片桐:宇宙用Ez8のような(笑)。
堀内美康:やっぱりその線ですか。
堀口:各ゲームの内容を加味して真っ黒でも遊べるものを設定したほうがいいんでしょうね。
柴原:なるほど。単なるゲーム用の新型機ではなく、ゲーム内容にまで深く踏み込んた上でもっと煮詰めていってファンの人にも「真っ黒だけど好き」と思ってもらえるものを生み出していこうと。その第一弾としての『ギャザービート2』をみなさんぜひ楽しんでみてくださいということです。
堀口:そういうことですね。



●『G GENERATION GATHERBEAT』シリーズ(2000年〜)
プレイステーション用ソフトとして発売された『G GENERATION』のワンダースワン版。『Gジェネ』が基本的には時代の流れを追うのに対して『ギャザービート』は『機動戦士ガンダム』をベースにしながらもオリジナルストーリーが展開される。最新作の『ギャザービート2』はワンダースワンカラー専用となり、現在好評発売中。


君の“嫌いな”オリジナルMSを大募集!
(〜中略〜)集計結果は11月号で発表!(予定)
*送られた意見の内容は、今後のOMSのデザインおよび設定考証などを行う上での参考にさせていただきます。
2004/12/19
12/20微修正

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