ガンダムゲームMS黒歴史-2

いちご大福にオリジナルMSを見た!-2
MSエキスパート委員会(仮称)・特別座談会(第二回)

角川書店「電撃ホビーマガジン2001年8月号」P68〜69

MSエキスパート委員会(仮称)、2年間の足跡
各種、“ガンダム系ゲーム”に多数登場する、“フィルム化されないオリジナルMS”は今から2年前、堀口大明神の提案により、会社や部署の枠を越えた、“ガンダム当事者”と運用当事者とで意見を交換し、設定観を共同構築する、“MSエキスパート委員会(仮称)”を結成、こうした機体の設定・コンセプトを決めている。そこでDHM編集部が座談会の場を用意し、その成果について忌憚のない意見を交換した。その経緯をお届けする連載の第二回目は『Gジェネレーション』シリーズの機体を中心にお贈りしよう。

MSエキスパート委員会(仮称)スタッフ
バンダイ・ホビー事業部:川口克己、狩野義弘
バンダイ・ビデオゲーム事業部:稲垣浩文、牛村憲彦
バンダイ・SWAN事業部:堀内美康
伸童舎:渡辺利浩 ライター:岡崎昭行
サンライズ:堀口滋(大明神)、森田彰啓
座談会特別参加
デザイナー:片桐圭一郎
電撃ホビーマカジン編集部:柴原宏則

●Gジェネレーション
柴原:量産型ビグ・ザム』(★)が出ました。
狩野:量産型ビグ・ザムはむしろ存在していてほしいんですが、あのデザインが嫌。というのも、僕の妄想には量産されたビグ・ザムがジャブローに侵攻していくシーンというのがあって…(笑)。
川口:そうそう。オヤジのノスタルジーでいうとね、ビグ・ザムはムサイの腹にはまって運搬されたら、逆さまになって大気圏突入をしてジャブローに降下しなきゃならんのですよ。
狩野:突入した機体で蹂躙しつつ、ビームを撒き散らすイメージからすると量産型の脚は短かすぎ。
川口:そう。そういう妄想がこの機体では無理。
片桐:それはデザインとしてということですか。
岡崎:これだと大気圏突入時に燃え尽きそうだね。
川口:椎茸みたいなビグ・ザムが逆さになって大気圏突入するのが燃える状況なんだよね。
渡辺:たしかにアレが森の中からぬうっと出てきたら「怖ぇ〜」って感じだよね。
狩野:それが見たいんですよ。
渡辺:この量産型だと怪獣度が低いんだ。
川口:そう。そうそうそう。
渡辺:第一、これはドズルの趣味じゃないよね。
狩野:劇中の悪魔的なイメージの延長にないな、と。
柴原:ビグ・ザムのジオン章っぼいシルエットがジオンを象徴していると思うんですよ。
川口:だからこのデザインは違う気がするよね。
渡辺:『ジオンの系譜』の続編ではぜひジャブロー侵攻シーンのムービーを入れてほしいですね。
稲垣:実は…なんてことはないんですが(笑)。
一同:えぇ〜(笑)!
渡辺:これはアプサラスからの流れなんですか?
牛村:デザインしたのはアプサラスの後です。まだアプサラスIIIが出る前ですが。
渡辺:アプサラスIIIは脚が細いけど、この量産型ビグ・ザムよりはこっちのほうがいいな。
川口:アプサラスIIIが落ちてきてもかなり嫌かも。
一同:嫌だよね〜(笑)
狩野:この嫌だっていうのがポイントなんですよ。
一同:そうそう。
渡辺:「火星人来襲!」みたいな感じでね。
片桐:つまり量産型はデザイン的に“怖さの演出”ができてないってことなんですよね。
狩野:実際の工業テザインには機能を追求した結果の機能美があると思うんですが、MSは機能美よりも“シチュエーション設定”が大事だと思うんです。送り手として「こういうシチュエーションで使うからこのデザイン」ということを妄想せずに発注しちゃいけないんだろうなと思うんですよ。
川口:『ガンダム』の場合、そういう妄想ができるスペースがたくさんあるんだよね。だからそこにうまく引っ掛かれば、みんな「これは納得」って思ってくれるんだと思う。そこを外すと「なんか違うんじゃない」ってことになると。

●『Gジェネレーション0』
渡辺:ザク50』(★)…。
岡崎:設定的には「F91』の頃、アナハイムがMS誕生50周年のアニバーサリーモデルとして製作したということになっています。
堀口:実は“MSエキスパート委員会(仮称)”結成のきっかけがこいつなんです。
一同:(爆笑)
堀口:これを見て『コレじゃイカン』と。ザク50だけでなく『Gジェネ0』用の機体すべてがね。
柴原:誌面で立体化したんですが、正直なところ「コレをザクと呼ぶな!」というのはありました。
川口:ザクじやないよね。
森田:たしかアナハイムはザクの名が付くMSは作ってないんじゃないですか?
渡辺:ハイザックは連邦でザクIIIはネオ・ジオン。
柴原:設定はともかく、“ザク”の名を冠したMSとしてのデザインがダメ。
堀口:これがダメな人ってほかには…(数人が挙手)。結構多いなぁ。やっぱりデザインがダメなの?
岡崎:むしろコンセブトと設定がダメで、それに準じたらデザインがこうなったんじゃないですか。
牛村:申し訳ありません…。
堀口:これは当時関わったスタッフ全員の問題でしょう。特にコンセプトは今なら通さないと思います。
渡辺:新しいゲームのたびに「新型機を出せばいい」といった“OMSバブル”の頃の産物だからね。
柴原:それで考えたのが「記念事業としてのMSを作るにあたって、アナハイムのトップが当時(UC0130年頃)の有名なデザイナーに依頼したのが斬新なものになっちゃって、でも却下できずに作っちゃった」というアイデアなんですが(笑)。
狩野:それはアリかも。コンセプトカーならぬ“コンセプトMS”。それならありそう。
堀口:なるほどね。UC0130年代の感覚ならカッコイイかもしれないけど、古くからザクを知ってる人には納得できない。
川口:ポルシェがタイガーIを曲面主体で造って「これが現代のタイガーIです」なんて言ったら、我々の世代は認めないだろうってところかな。
堀口:これがザクじゃなかったらどうでしょう。
柴原:それならOK。斬新なデザインだし、“コンセプトMS”なら納得できる気がします。
渡辺:オリジナルガンダムなら顔さえクリアすればなんとかなるけど、ザクの場合は最初のコンセプトから慎重に決めないとダメだってことだね。
牛村:そうですね。肝に銘じます。
柴原:次は…『ガンダムMk−IV』(★)です。
岡崎:これはわざわざMk−IIIMk−Vをつなげるデザインにする必要はないと思うんですよ。
渡辺:隙間があったらとりあえず埋めてみようっていうのは良くないよね(笑)。
川口:これはウチもSDを出しちゃったんだよね。
狩野:ガレージキットも出しました。
柴原:ウチは作例を…。結構人気高かったです。
森田:模型側からは援護射撃があったわけだ。
岡崎:設定上もMk−IIIとMk−Vはまったく別系統で、それぞれ独自に開発されたもの。Mk−Vはサイコ・ガンダムを小型化したものなので、このふたつをつなぐ機体というのは本来ありえない。仮にMk‐IVがあったとしても、それは先の2機とは異なるデザインのほうがいいと思うんです。
柴原:Z系のMk−III、サイコ系のMk−Vなら、Mk−IVも別系統がよかったと。
堀口:名前的には中間機のほうが説得力はあるけど、それぞれの設定からすると嘘をつきすぎてるってことか。いわゆる“ロストナンバーズ”に関しては、そのネーミングまて含めて検討しなきゃいけないわけだ。大変だこりゃ。
柴原:あまりつきつめ過ぎると模型的な遊びの余地がなくなるので甘い部分は残してほしいんですけどね(笑)。では次にいきましょうか。
牛村:ああ、『エビル・ドーガ』(★)です…。
柴原:確か『F91』の頃の機体だったはずですが。
岡崎:『クロスボーン・バンガード』の機体に“ドーガ”の名前を付けてほしくなかった。
柴原:やはりドーガ系と言われるデザインの流れがあるなかで、30年後の世界とはいえそれを外してほしくなかったというのはありますね。
堀口:そう言われると全然違うじゃん。
柴原:しかもこれ、α・アジールの機体を回収したことになってるんですよね。
岡崎:そうそう、その設定も嫌。30年も同じ機体の研究を続けるなって感じなんですよ。
渡辺:でも天下のブッホ・コンツェルンなら回収は簡単でしょう。基礎研究にもそのくらいはかかってもいいと思うし。
岡崎:あと形も嫌。って全部嫌なんですね(笑)。
堀口:この翼みたいなのが嫌なの?
柴原:これには“バグ”が入ってます。
岡崎:でもラフレシアとリンクしたデザインにもなってないんですよ。
柴原:これは名前とデザインがしっくりこなかった機体ということですね。ドーガの名前を使うなら、もっと『逆シャア』側に振ったほうがいいし、クロスボーンの機体なら名前をデナンやベルガで統一するなどしたほうが良かったと。牛村さん、なにか弁解はありますか(笑)。
牛村:いえ。話を次に振るためにもうひとつ大福を頂きます。…『ザク50』です(一同爆笑)。
片桐:じゃあ僕が。あ、『ザク50』(さらに爆笑)。
堀口:『ザク50』はキラータイトルですね。さすがは委員会(仮称)設立の立役者(笑)。

●GジェネF
牛村:次は『プロトタイプキュベレイ』(★)…。
岡崎:その名のとおりキュベレイのプロトタイプ。エルメスとキュベレイの中間機ですが。
柴原:中間機のデザインになってない気が…。
森田:上半身はエルメス的なんですが、下半身がキュベレイにつながらないんじゃないですか。
堀口:中間機にその前後のデザインを盛り込む必要はないと思うけど、「らしさ」が欠けてるのかな。
稲垣:言い訳ではないんですが、これのSD版はもっとエルメスっぽく見えますよ。
堀口:SD主導のデザインなんだね。『Gジェネ』の初期はそういうものも多いんじゃない?
牛村:おっしゃるとおりです。SDメインでデザインを先行させているため、往々にしてSDのほうがカッコイイことはありますね。
片桐:そうしたギャップを減らすためにもこの委員会(仮称)を設立したと。
堀口:そう。SDメインのものでも、やはりMSの基本はリアル体形ではないかと。そのリアル版はカッコイイほうがいいな、と思うんです。遊びなら遊び、グレーならグレーで「ちゃんとやってるぞ」って言いたいと。その上で好きか嫌いかはユーザーに判断してもらいたいんです。
渡辺:そうした部分でこのプロトタイプキュベレイは中途半端になってしまったということですね。
岡崎:安易なプロトタイプや量産型の粗製濫造も今後見直していきたいというのはありますね。
柴原:模型として楽しむのは別として、どちらも簡単に思い付く反面、説得力を持たせるのは難しいものですからね。より大勢の目に触れるであろうゲームに登場させるなら、グレーなりの説得力とカッコよさは考慮しないといけないわけですね。そろそろ誌面がつきますが、次回はもうひとつのGジェネ、『ジージェネレーション ギャザービートシリーズ』について語っていただきます。

●『G GENERATION』シリーズ(1998年〜)
SDガンダムのシミュレーションとしては初めて本絡的にMSの開発・生産の要素を取り入れた作品。プレイヤーはゲームオリジナルのキャラクターを使って各マップをクリアする構成。第1作目の『G-GENERATION」では『機動戦士ガンダム』から『逆襲のシャア』までの時代が扱われているが、続く『G-GENERATION』ではすべての『ガンダム』作品から主役機が登場。最新作の『G-GENERATION F』では更に機体の充実が図られている。特筆すべきはオープニングをはじめとする様々なムービーシーンで、3DCGを駆使した「SDなのにかっこいい」映像が満載されたものになっている。


2004/12/19
12/20微修正

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