外道特撮パトレイバー (1)


いわゆる一つの実写版


2008/8/24
■実写ドラマ「パトレイバー・第一話二時間スペシャル」脚本(の様な物)の一部分


 プツン。テレビの電源が入る。
 辺り一面の花園に、笑顔の子供達と巨大ロボット。
『明日の笑顔を作る、シノハラグループ』
 画面はニュースへと変わり、東京の街の遠景を映す。ガシャン・・・ガシャン…機械的な足音が近づく。電気店の店頭のテレビに影が差して通行人が後ろを振り向くと、巨大なロボットが道路をゆっくりと歩いてゆく。

 『PATLABOR』

 工事現場。パワーショベルに混じって建設作業用レイバー・ケンタウロスが歩き回り、遠隔操縦されて鉄骨を組み立てていく。
 ガキィ・・・ガギギィ・・・一体のレイバーの挙動がおかしい。

(中略)
 暴走するケンタウロスは細いワイヤーを寸前で探知し、左手のカッターで切断。パトカー数台が進路を塞ぐが、車体を踏みつけてバリケードをゆうゆうと突破。そこに、桜の代紋を付けた無人機リクオーが二台、尾からケーブルを引きずりつつ現れる。ケンタウロスは双方にパンチを浴びせ、相手がヨロヨロと体勢を崩した隙に車輪で100mほど走った後、公園の林の中に入っていく。尾から伸びる電源コードを外し、後を追うリクオー。公園の中心付近では、低空で滞空する大型ヘリコプターから、一台のレイバーがロープでゆっくりと降ろされていく。
巡査部長「来たか・・・」
 2台のリクオーがようやっと追い詰めたかと思った瞬間、リクオーの動きが止まる。
巡査A「妨害電波です!」
「クソッ!」
 モニターが落ち、遠隔操縦用スレイブアームを投げつける。
巡査部長「後は任せたぞ、特車隊・・・」
 ケンタウロスの眼前に、有人型レイバー・サジタリウスが出現。あわてて逃げるケンタウロスを追いかける。
「運転席の方は、どうなの?」(3/27誤字修正)
「人影は見えますが、赤外線センサーには無反応です」
「よーし太田、やっちゃっていいぞ・・・あ、なるべくお手柔らかにね、一応 」
 組み合う二体、サジタリウスがジリジリと押していく。
「ケッ、こっちは交通課の瓦礫処理用とは出来が違うんだよ・・・対レイバー犯罪専用の・・・パトレイバーだ!」
 バンッ! 両腕から火花が飛んで腕が落ちる(超伝導が破れたのだ)。
 ドン! 横転するケンタウロス。サジタリウスは操縦席をギリギリと引き剥がす。
「やはりマネキンか・・・」
 ボンッ! サジタリウスの右肩に火花。
「あちゃあ、ジョイントが・・・乱暴しすぎるから・・・」
「二週間はメーカー行きですかね」
「俺のせいじゃないぞ、仕方なかったんだ。大体・・・」
 やれやれ、という感じの面々。サジタリウスはフックをかけて大型ヘリに回収されていく。
「よし、いいぞ篠原・・・あ、もうちょい右だ」
「ファ〜アア(あくび)・・・しかし何でこうウチは人使いが荒いんだ」
 通信が回復し、小型ヘリコプターが地上に降りて、後藤は地元警察に後を引き継ぐ。
「ま、俺達の仕事は傭兵みたいな物だからな・・・ところで怪電波の発信源、わかった?」
「ダメですね、さほど離れていない事は確かなんですが・・・」
「やっぱり・・・じゃ、とっとと引き上げるとしますか」
「ひどい、レイバーをこんな事に使うなんて・・・」
「ン?」
 この場所に似合わない高い声にふと振り返る後藤。遠くにリクオーが倒れた木々や壊れたベンチをテキパキと片付けているのが見える。
「どうしました?」
「いや、なんでもない・・・やってくれ」

(中略)
 署内の会議室、後藤と南雲のみ。
「なるほど、シノハラのモルモットって訳ね・・・だけどホントにもらっちゃっていいの?」
「構わないわよ、もともと二足歩行自体の有効性が疑問視されてるし、運用に未知数の要素が多すぎるわ・・・おそらく相当な駄々っ子ってとこね」
「現場で足を引っ張りそうだって事か」
「ただどのみち使えなくても、上の方は警視庁の人寄せパンダになればオッケーと思ってるみたいね・・・とはいえ広報課に鞍替えするのは流石に遠慮したい所・・・」
 電話機が鳴る。
シバ「操縦席周りに問題点が見つかって、納期が一ヶ月遅れるとの事です・・・ただ身長160センチ以下なら今すぐオッケーだそうですが」
後藤「160センチ以下ねぇ・・・ロシア戦車じゃあるまいし」

(中略)
 後藤、部下のパソコン画面を見入る。
「レバコンの上位は自衛隊レスキュー、消防署員、建設作業員が毎年独占で、警察署員は・・・あ、一回戦落ちなら交通課で一人だけいますけど、当たってみますか?」

(中略)
 柔道場で試合を眺める後藤と中年の署員。
署員A「ところで、一丁最近の若い奴を鍛え直してくれませんかね」
「いや、もうトシなもんで・・・ところであそこの人だけ、妙に背が低くない?」
署員A「ああ、婦警なんですよ。昨年入った新人の」
「婦警?」
署員A「あ、組みますね・・・相手は強いですよ、国体出場経験もあるとかで」
「うーん・・・倒れそうでなかなか倒れないな・・・ン、まてよ、柔道の才能ってレイバー操縦に役に立つかな?」
署員A「別にいらないでしょう、オートバランサーがありますからね。ただ開発中の二足歩行型は、複雑な動きをさせるにはちゃんとコントロールしてやらないととダメだとか・・・」
「あ、決まったな・・・巴投げ?」
署員A「ええ、得意技ですよ」
「もしかして、学生チャンピオンか何か?」
署員A「いえ、学生の時は確かバスケをやってたとかで、もし元からやってれば今頃は案外オリンピックに・・・」
※2013/3/27記述変更
(中略) 署員A「ところで、今日は確か署員を探しに来られたんですよね?」
(中略)
「彼女って…え゛?」

(大量に中略)
シバ「いずれにせよ天才の仕業なのは間違いナイっすよ」
「日本中のレイバーが狂いだす、か・・・メーカーの技術陣で何とかならないのか、篠原?」
「そんな事、こっちに聞かれても・・・」
「電源は強制的に止められないのか? せいぜい冷却用の液体窒素が気化するだけだろ?」
「ムリです、安全に落とすのに最低5時間はかかります。いきなり切ると超伝導が破れて行き所を無くした電気が爆発しちゃいますよ」

(中略)
 わずか10分で悪夢は去った。
「関東全域で、一斉に止まったとの事です」
「見逃してくれたのか?」
「警告・・・いや、我々への挑戦状でしょうか?」

(大量に中略)
 新夢の島の瓦礫の地面に海水が40センチほど満ち、両機が戦う度に水が跳ねる。無人となってなおも動くフランケン。ようやく必殺の巴投げが決まり、フランケンはヨロヨロと起き上がるも体からガスが噴出し、片手を天に向けて上げた姿で凍り付き、美しい氷の柱の様になってゆく。
「終わったか・・・ん・・・マズイ、伏せろ野明!」
 自爆するフランケン。イングラムの元に駆け寄る小隊の仲間。滞空していた二機のヘリが飛び去っていくのを、いぶかしげに見上げる後藤。
「誘導電波はやはり・・・」
「さあね・・・ただ、この中継は最高の兵器デモンストレーションだったろうな」
「しかし、毛瀬澄夫の自供が出たら一挙に・・・」
「いや、単なる駒の一つにすぎんだろう、奴でさえも」
「結局俺達は、何者かの手の上で踊らされていただけなのか、クソッ」
「ま、何か事が起きればその都度動くまでだ。所詮我々にはそれしかできん…目の前にあるできる事だけをなすまでさ、最善にね」

 カメラが高く引いていき、新夢の島の全景をニュース画面が写す。
「提供は、ゆりかごから墓場まで・明るい未来を見つめるシャフト・エンタープライズがお送りしました。〜シャフト、シャフト、あなたのシャフト〜♪」
 プツン。
『昭和7X年4月20日17時20分、LC-7X-182号事件終了』


おまけ

○第12話予告
「特車二課は出て行け〜!」
「こらーっ悪ガキども、あたしのアルフォンスにラクガキするな〜!」
「俺達のニセ者だって?」
「あれはまさか・・・イ、イングラム!?」
次回、「特車二課逮捕指令」

○第12話あらすじ
 冒頭から「警察ロボ・イングラム」のOP、バンライズのCM。俳優は全員が別人で、コスプレ犯罪者達が違法改造レイバー「にせイングラム」を使って違法駐車の車を引っくり返して回る等の悪事を行い、二課に嫌疑がかかる(現実には足型鑑定で特定できるので濡れ衣はありえない)。
(中略)
 ラストはイングラムが大ジャンプし(無論ありえない)、左腰に収納された対レイバー手錠と足錠(大きさ的に入らない)をかけてお縄。バラード調のEDの後に第13話の予告が流れ、「しかし今回もムチャクチャな話だったな」と太田がスイッチを消す。

○第××話「老朽化」。
 「どうですウチの子、人間っぽいでしょ?」 「確かにLOS-6.14とは思えない動きね・・・だけどメーカーさん、プログラムを良くああもグチャグチャにできたものだってこっそり愚痴ってったわよ」 「そうなの? ウチとしてはいっしょうけんめい育て上げてるつもりなんだけど」 「201の方は特にクセが多すぎて参考にできないそうよ…あちらとしてはどうやら万人向けの無難なシステムを作りたいみたいね」 「なるほどね・・・マニュアル通りに使ったってオモシロくないのになあ」(以下略)

○最終話「機種転換」。
 レイバー博物館で、車椅子の老婆を孫娘が引く。「この子達に会うのも久しぶりねぇ…」 「あ、こっちが二代目アルフォンスのスーパーイングラムでしょ、おばあちゃん。で、こっちが…」 (完)



○94年頃に考えた妄想脚本が元で、こんなんだったっけかな、フンフン・・・と思い出しながら書いたものです(当時の文章は都合により永久封印…ちなみにこの次に作った脚本がΖ)。まあ、本当は脚本ではなく「デザイン」なのですけど、一体どこがだよと突っ込まれた際に説明困難なため一応脚本だという事にしておきます(「どんな世界で、どう動かすか?」というのもデザインの大切な要素だと思うのですが)。

○イングラムの腰と踵には車輪があります(毒を食らわば皿まで)。股関節以下の形状はプロメテ(末端肥大の脚部はナシ、敵ロボはアシモ脚)。 桜の代紋の両脇にバスト・エアバックシステムあり(結構恥ずかしい)。

○やっつけた後は「冷却剤漏れ→派手な放電→場合により爆発」が基本パターン(ヘッドギアのガンダムへのアンチテーゼも何のその)。ただしリボルバーの弾丸は粘着凝固弾等が主。銃と警棒は本体とチェーンで繋がり(ただしレイバーの腕力でひきちぎるのは容易)、他のレイバーが持っても作動しません。実弾(というより砲)を発射する際は下腕にアタッチメントで固定、リボルバーはただのダミー・・・とすると犬好き監督が喜びそうです(「メカフィリア」を参照)。

○マジメに考えると、レイバーのコジツケというのはガンダム世界よりも困難です(ちなみに一番難しいのはボトムズですね、あれは完全にお手上げ…究極のリアルロボットどころかファンタジーである事はグレメカ誌でも看破されてます)。まあアニメなら別段おかしく見えないものの、実写ではリアリティ不足は致命的です。ただし、街にレイバーが活躍できる余地が無いなら作ればいいので、「特殊な巨大建造物内」もしくは「瓦礫の山」を舞台とすれば画面上は何とかなるかと。

○リアリティ重視のため人型のレイバーはほとんど存在せず、ケンタウロス型が主です(軍用のジュピターは試験段階)。なお元作品とは異なり多脚型の全ての機種に「手」があります。レイバーは大半が無人機なので暴走したら地元警察とか機動隊が食い止める訳ですが、ごく少数の有人型の場合に「レイバーでないと動きを封じられない状況」がごくまれに発生します(とはいえヘリから降下した頃には大抵現地の警察によりカタが付いてしまっているので、格闘などは滅多にナシ)。
 また、人型がほとんど存在しないのは「人型など非実用的、できる事はせいぜい広告塔とアトラクションだけ」という常識のためで、それによりはみだし者の愚連隊にイングラムが押し付けられたものの、「人寄せパンダだって使いようはあるってね・・・」と小型の利点を生かして建物の隙間に入る、4脚レイバーの下に潜って転倒させる、踵の車輪のみで道路を走る等のイレギュラー的な使い方をし、毎回知恵と工夫で常識を覆していく…といった感じです(ありがち?)。

○パトの漫画版では野明が「乗り物に酔わない特異体質」という描写がありますが、ドラマ的に映えないので「レイバーの身長制限(イングラムは5mくらい)」と「天才的バランス能力」の二点で説得力を持たせました(柔道なのは無論当時の世相から…まあイカニモって感じではありますが)。
 女性に巨大ロボットを操縦させる理由は、古今東西「萌へるから」以外には無論当然一切ありませんが、それであるがゆえにこそミモフタモナイ邪欲を隠蔽するための「アリバイ設定」がゼッタイに必要です。ちなみに某パワー○ールでは「人型兵器は上下振動が激しいので男のパイロットだと急所を打ってしまう」とのこっぱずかしいハーレムの言い訳高度な考証があった様な・・・。あとポケ戦の場合だと、シューフィッターという言葉が十年ほど前から出ているので(当時からあったのかもしれませんが)「アレックスはアムロ専用機のため操縦系の最終調整用のテストパイロットは同じ身長が適している」という理屈で邪欲隠蔽は完全です。あ、なんだか話が逸れた感もありますが、後藤と野明がいかに接触したか(男を差し置いて発掘されたか)というのは、妄想対象としてそそられるオイシイネタだとは言えるでしょう。

○こんなのを書いてしまってはいますが、パトレイバーは専門領域ではないので扱うのはこれでオシマイです(ラクガキは追加の可能性あり)。いや、領域というよりは「愛の問題」ですかね・・・「082はレイバー魂の何たるかをわかっていない!」と突っ込まれると多分答えに詰まるかと(あ、突っ込み自体は御自由にどうぞ)。


2008/8/24
2013/3/27

models
Zatsubun パト-2

G_Robotism