スペシャルインタビュー PART2
●キャラクター&メカニカルデザイナー
永野 護
★10月号から始まった長編インタビュー第2回。
今回は、''ヒゲのプラモ怪人''小沢勝三氏も加わってのプラモ談義だ!
ITCのメカとキャラが大好きなんですよね
(十月号からつづく。)
――例えば、キャラクターの発想みたいなものは、どのあたりから生まれてくるんですか?
永野 まあ、いろいろ場合によって違うんですけど、例えばロック関係のアーチストたちのファッション的なセンスみたいなものは、参考になりますね。着てる服やヘアスタイルなど。ぼくもギンギンにロックに凝ったことがあるんで、そのへんの趣味みたいなものは生かしてますよ。やっぱり、メカにしてもキャラにしても、自分の好きなもの、趣味みたいなものがすこしずつ入ってますね。例えば、髪を切ったあとのガウ=ハ=レッシイ。あの髪型とキュロット風のスカートのイメージは、「謎の円盤UFO」に出てきたエリス中尉、ムーンベース(月面基地)の戦闘隊長である彼女をもとにアレンジしたものです。
――特撮ものもお好きなんですね。
永野 ITC(「サンダーバード」などを作った、イギリスのプロダクション)、特に「UFO」と「スペース1999」さえあれぱ、あとはなにもいらない!――というくらいのITCマニアです(笑い)。なんたって、ITCに自分のデザインを送りつけたくらいですからね、もう、たいへんなどマニアです(笑い)。
どのキャラクターも、みんな愛着がありますよ
――お気に入りのキャラというと、やはりレッシィですか?
永野 うーん、レッシィって人気あるんですよねえ・・・・。でも、ぼく自身は、そればど思い入れがあって作ったキャラではないんです。ほんとうはこんなこといっちゃいけないんだろうけど、レッシィば単純に「受け」をねらって作ったんですよ。ダバと風じで、主役キャラだから、こんなものだろうという・・・・(笑い)。でも、最近はやはり、愛着みたいなものはわいてきましたね。ただ、みなそれぞれに自分の作りだしたものでしょ。だから、特にどれが好きだということばいえないんですよね。
――ストーリーの展開に従って、服や髪型をかえていくというのは、アニメでは、なかなか難しいと思うんですが・・・・。
永野 ええ。でも、そうやってすこしずつでもかえて見せていかないと、いつも同じ服ばかりというのは、やはりおかしいですから・・・・。アニメキャラも気分で服をかえるくらいのことは、あってもいいと思うんですよ。
――ところで、キャラ表のサインが〃くりす〃となっていたり、〃M・NAGANO〃だったり、いろいろなんですが、理由があるんですか?
永野 もともとぼくは、自分の絵にはサインを入れなかったんです。つまり、ぼくの絵はぼくにしかかけないものなんだから、サインを入れる必要はない、見ればわかるじゃないかと(笑い)、すごい、生意気ないい方ですけどね。でも、サンラィズのほうから整理するうえで必要だということで、気分でいろいろと使っています。〃くりす〃というのは、大好きな「イエス」というグループのメンバー、クリス=スクワイアからとった、ぼくのニックネームです。
ドイツ軍の戦車ばっかり作ってたんですよね
――永野さんは、プラモデルにもずいぶんとおくわしいということで、このへんでモデラーの小沢勝三さんに加わってもらって、プラモ談議といきましようか。
小沢 はじめまして、よろしくお願いします。
永野 こちらこそ。
小沢 いつごろから、模型を本格的に作り始めたんですか?
永野 ‘74年くらいですか・・・・。ちょうどミリタリーモデル全盛のころで。タミヤの戦車、飛行機もハセガワがどんどんだしてきたころで・・・・。だから、最初はミリタリーから入りました。ドイツ戦車ばっかり作ってましたね。 最初に買ったのは、レオパルドとかパンサー。三十五分の一の…。それからウォー力ーブルドッグが出て、プラ製のキャタピラにびっくりして・・・・。
小沢 プラキャタピラになったのは、パンサーが最初なんですよ。
永野 改訂版になってからですか。
小沢 そうです。そのあと、キングタイガーもプラキャタピラにしたんだけど、今度はディテールがあまくてファンのひんしゅくを買ったんですよ。
永野 おまけに初期先行型だったし。
――あの、すみません。いきなりマニアックなお話になってしまって、チンプンカンプンなんですが・・・・。
永野 あ、ごめんなさい。小沢さんみたいな方と、こういうお話ができる機会はめったにないもんで…(笑い)。
小沢 じゃあ、エルガイムのキットの話からにしましょうか。ちょうど、バルブドのテストショットがあるんです。
オージェのキットは百点をあげられます
永野 小沢さんが仮組みしたんですか?・・・・これはプロポーション、ドンピシャですよ、ディテールはたりないけど。オージェのときも驚いたんですよね。脚から上は設定とぜんぜん違うんだけど、あれだけ雰囲気をだしていれば、百点です! 設定なんか違ってたってかまわないって感じでしたからね。
小沢 そのへんは自由な発想なんですね。
永野 ただエルガイムに関しては、マイナス点がついてしまいますね、百四十四分の一も百分の一も。
小沢 くわしく見てますね。よく作られるんですか?
永野 いやあ、バンダイのほうから送ってもらっているんですが、時間がなくて、仮組みまででおしまい。
小沢 じつは、百分の一のエルガイムの組んだものも持ってきてるんです。いろいろ、コンセプトをお聞きしたいと思って・・・・。
永野 アッ、ほんとだ。アレッ、でも、こうやって見ると、これよくできてるなあ。写真で見るより、ずっといい。
小沢 宣伝写真の場合は、全体のイメージをつかまないうちに撮っちゃうことがあったりしますからね。それに、設計自体は初期のデザインから起こしてますでしょう。主人公メカは、番組制作に入る前に図面を引くことが多いから、その分、ハンデはありますよね。
永野 百四十四分の一は自分で作ってみて、コンセプトがあまり伝わってこないですね。決定的な違いは、肩は前後のスイング式ではなくて、ボールジョイントになってるんです。
オージェは黄色じゃなくて、金色なんですよ
小沢 このバルブドはボールジョイントになってますよ。そのへん、研究してますね。
永野 ほんとだ。でも、このバルブド、出来いいなあ・・・・八十点。頭が違うからマイナスニ十点です(笑い)。
小沢 はじめて自分のデザインしたものが立体化されたときの感じって、どうでした?
永野 うれしいですよ、それは。デザイナーの特権ですね。ただ、半分は自分で木型を作りたかったと思います。アニメで実際に動いてるのも同じですけど、やっぱり作った者としてね、最後まで自分で責任とりたいって思うんです。まあ、がまんしなさいっていわれてますけど・・・・。
小沢 最初の段階では、製作者の銘が彫ってあったりしましたよね。
永野 アシュラテンプルでやってみたんだけど、NGが出ちゃって。動かせないし、彩色に三倍くらい時間がかかっちゃうんですよね。 じつは、A級ヘビーメタルっていうのは、アニメだから、しかたなくあの色なんですよ。実際はメタリックなんです。オージェなんて、ギンギンギラギラだし・・・・。
小沢 金でしょ?
永野 そう、金なんですよ。金とカッパーと、しんちゅう色っぽくて・・・・。エルガイムはパールホワイトっていうか、半透明のプラキャストみたいな質感なんです。とても透明感のある白です。バッシュだったらメタリックグレー、グルーンだったらメタリックブルー、アシュラテンプルは赤銅色ですね、みがきこんである。
小沢 ということは、繊細なグロスで仕上げてシリコンクロスでみがきあげる、ヌメッとぬれたような質感ですか?
永野 そのとおりなんですよ。
小沢 オージェなんか、黄色でキラッと輝く演出をしてたから、これは金を意識してるんだなあってわかりましたけど・・・・。
ヘビーメタルの装甲は弾力があるんです
永野 セラミックみたいなものっていい方はしてるけど、その世界の考え方を、現実的なことばにおきかえているだけなんです。オージェなんか、素材の上から金箔をはりつけてるんですよ。その上からコーティングもしてるんです。表面積を広くするために、波状コーティングをしてるかもしれないわけですよ。効率的にも、よい影響が出るでしょうからね。
小沢 最初に設定を見たときに思ったのは、セラミックでホワイトでしよ、金属的な質感表現ができなくて、しかもサビ色が使えない・・・・。ほんとうに自然のウェザリングしか手はないなって感じで、悩みましたね。
永野 怪獣の歯の雰囲気ですね。なにか、蜜でぬれたような透明感・・・・。
小沢 番組の中では、装甲が割れたりするような表現は使ってないですね。
永野 しいていえば、シャーマン戦車の砲弾をめいっぱい受けたあとのタイガー戦車の被弾状況になるんじゃないかと・・・・。ベコッというか、もし割れるとしても、パリッとではなく、マシッというような、弾力のある感じなんですね。
小沢 ところで、ヘビーメタルって、予備の武器をたくさんもってますね。
永野 A級ヘビーメタルは、ほとんどがワンオフ(一機のみ)で、いってしまえば、陸軍の集団戦の歩兵と海兵隊の精鋭くらいの違いがあるんです。一人で放り出されても何週間も戦いつづけられる。A級はそれぐらい単体のポテンシャル(潜在能力)が高いんです。第42話に出てくるガイロンなんか、対ブラッドテンプル用バスターランチャーなんて個別兵器を待ってる。Bテンプル自体は出てきませんけどね。基本的には一対一の世界なんです。
(話が核心に近づいてきたところで、十二月号につづく。)
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